猫の歯みがき、1か月半続けてみました|変わったのは、猫のほうじゃありませんでした【実体験あり】

飼い主の膝に頭をあずけて、目を閉じてくつろいでいるキジトラ白の猫 にゃん

1か月半前、わが家は「猫の歯みがきは、できなくていい」という記事を書きました。

夫婦二人がかりでも、にゃん太(13歳/生まれてすぐに保護した子です)の歯はほとんど磨けなかった。動物看護師でトリマーの妻も「猫はほとんど無理」と言う。だから、できなくていい――そういう記事です。

あれから1か月半。実は、あのあともずっと続けていました。今回は歯磨きというより指で拭くです。

毎日ではありません。やらない日もたくさんありました。それでも、やった日は記録を取ってきました。その記録が、今回の記事です。

先に結論を書きます。

変わったのは、猫のほうじゃありませんでした。

猫の歯みがき、夫婦二人がかりでもできませんでした|「できなくていい」とプロが言う理由【実体験あり】
猫の歯みがきは難しい——動物看護師でトリマーの妻と二人がかりで挑戦しましたが、できませんでした。プロが「できなくても仕方がない」と言う理由、磨けないときにできること、やめどきの決め方まで、13歳の保護猫にゃん太との実践記録をまとめました。

この記事を読むとわかること

  • 1か月半で、やり方が3回変わったこと
  • ★人数が減るほど、ラクになっていったという話
  • 猫の口は、犬のように広がらないということ
  • 2回、吐かせてしまった話
  • そして、1か月半やって出た妻の結論
猫の歯みがきを1か月半続けて分かったことを5つにまとめたイラスト。人数が減るほどラクになったこと、猫が手を出したらそこでやめること、機嫌は猫が自分で戻すこと、やらない日があっていいこと、3分かかっていたのが30秒になったことを、キジトラ白の猫の絵とともに説明している

やり方が、3回変わりました

記録を並べると、こうなります。

最初の2週間 : 夫婦二人がかり(私が押さえて、妻が拭く)
次の数日 : ★妻が一人で、しかも"ささっと"できた
それ以降 : ★私が一人で、押さえずに拭いている

最初の2週間が、いちばん大変でした

正直に言うと、二人がかりの時期がいちばんしんどかったです。

人を2人そろえないと始められない。 夫婦の予定が合って、にゃん太もそこにいて、機嫌も悪くない――そんな時を待つ必要がありました。しかも、そこまでしてにゃん太は嫌がる。

続けるのが難しい形でした。

そこから、だんだん人が減っていきました。 いまは、にゃん太がくつろいでいるところにそっと近づいて拭くだけです。テーブルに集めて、チュールを見せて、二人で構えて……という“儀式”は、もうやっていません。

人数が減るほど、ラクになっていったんです。

にゃん太
にゃん太

みんなで来られると、かまえちゃうんだにゃ

押さえられるのも、嫌だったようです

3週間目に、妻がこう言い出しました。

「二人がかりで押さえるより、私がサッとやったほうが、にゃんちゃんが嫌がらないから。保定を嫌がるからね」

実際、私が一人でやってみたら、押さえていたときより抵抗が少なかったんです。

もちろん、歯を拭かれるのは嫌です。それは変わりません。でも押さえられるのも嫌だった。

つまり――二人がかりだと、”嫌なこと”が2つになっていたのかもしれません。一人なら、そのうち1つは減らせる。

ただし「一人が正解」ではありません

誤解がないように書いておきます。

口を広げること自体は、二人いるほうがやりやすいです。手が2組あるほうが確実なのは間違いありません。

だから「一人が正解」という話ではなく――押さえる負担を減らすか、手の数を取るか。 そのときどきで選べばいい、ということだと思っています。

ただ、「二人いないと始められない」ではありませんでした。 それだけは、はっきり言えます。

追いかけない、というルール

ひとつ、最初から決めていることがあります。

うまくいかなかった日に、時間を空けてもう一度、ということはしません。

犬のときは、それをやったこともありました。でも猫にはしていません。理由は、前の記事に書いたことと同じです。

猫は、もともと自由に生きてきた動物です。 無理に何かを強いる相手ではない、と妻に教わりました。

だから「今日はここまで」で終わり。追いかけません。

おわったら、おわりだにゃ

猫の口は、犬のように広がりませんでした

これは、自分でやってみて初めて分かったことです。

歯を拭くには、唇をめくって歯を出す必要があります。ところが――猫の唇は、めくれないんです。

妻に言うと、こう返ってきました。

「犬みたいに柔らかくて広がるわけじゃないからね」

犬の唇は、指でめくるとぺろっと広がります。猫は広がりません。ぴったり閉じていて、中に指が入っていかない。

猫の歯みがきが難しい理由は、性格やしつけの前に、口の作りにもあったんです。

……これ、ほかの記事ではあまり見かけません。やってみないと分からなかったことでした。

ぼくの口、そんなに広がらないんだにゃ

変わったのは、猫のほうじゃありませんでした

ここが、この記事の山場です。

始めて1週間くらいのころ、私は妻にこう言いました。

「にゃん太、なんとなく歯みがき慣れてきたかなぁ」

返ってきた答えが、これです。

「慣れてきていない。私が磨くのが上手くなってるだけよ。軽く噛まれてるし、本気で噛まれる前に私が逃げてるのよ(笑)」

……そのときは「へえ」と思っただけでした。

でも1か月後、私は自分で同じことを言っていました。

「ここはあとは、私の慣れと技術の向上だね」

一人になってからの3週間は、こういう3週間でした

うまくいかない側(にゃん太から見て右側)を、どうにかしようとした記録です。

1週目 「反対なんだから、同じにやっちゃダメだ」と気づく
 ↓   にゃん太の体の左右を入れ替えてみる(→まだまだ)
 ↓   ★手のほうを替えてみる(左手の人差し指)→ うまくいった
 ↓
2週目 ★自分が後ろに回ってみる → 今までで一番嫌がらなかった
 ↓   ★両手を使わないとダメだと気づく

猫を動かす → 手を替える → 自分が動く → 手の数を変える。

……だんだん、自分の側を変えるほうに寄っていってるんですよね。

にゃん太は、何も変わっていません。 変わったのは、私のやり方のほうでした。

……ただ、この話には続きがあります。

1か月半、私はずっと「右側をどうやって攻略するか」を考えていました。手を替えて、体の向きを変えて、自分が後ろに回って。

ある日、妻が拭いているのを見ていたときのことです。左をささっと拭いて、右に移ったところで、にゃん太が軽く嫌がりました。妻は深追いせずにやめて、こう言いました。

「明日は、右から拭いてね」

なぜかと聞いたら、こう返ってきました。

「先に拭くほうがやりやすくて、後のほうは拭きづらくなるから。毎日、左右交互に始めたらいいかも」

……当たり前のことなのに、まったく気づいていませんでした。

右が苦手だったんじゃない。右が、いつも”2番目”だっただけ。

先に拭くほうは、にゃん太もまだ我慢してくれます。でも2番目になるころには、もう飽きているし、嫌がり始めている。同じ手つきでも、結果が変わって当然でした。

私は「右という場所」の問題として、ずっと解こうとしていました。妻は「順番」の問題として見ていた。

★問題の立て方そのものが、違っていたんです。

ちなみに翌日、さっそく右から始めてみました。左5点、右5点。 ……そういう日もあります。

でも、その次の日。

もう一度、右から始めてみました。今までで一番きれいに拭けて、しかも10秒かかりませんでした。

そして、2番目になった左は10点。 2回手を出されて、そこでやめました。

左右が入れ替わっただけで、点数まで入れ替わった。 妻の言ったとおりでした。


2回、吐かせてしまいました

正直に書きます。1か月半のうち2回、歯みがきのあとににゃん太が吐きました。

どちらも共通していたのは、「もう少しでできそう」と思って、粘ったときでした。

1回目は、前日より拭けていたので、その分だけ長く拭いた日。ごはんを普通の量食べた直後でもありました。

2回目は、にゃん太が手で私の指をつかんで嫌がったのに、もう一度やろうとした日です。

「あと少し」が、いちばん危ない

その後、私は日記にこう書きました。

「ギリギリ上手くいかないと『もう少し』ってなりがちなので、気をつけよう」

ここで、妻の言葉を思い出してください。

「本気で噛まれる前に、私が逃げてるのよ」

プロは、できそうな手前で引いている。 私はは「あと少しでできる」と思って粘る。

同じ場面を見ているのに、判断が逆でした私は。

やってしまわないための、実用情報

  • 食後すぐは避ける(前のごはんは少なめに)
  • 長くやらない

そして、拒否には段階があると気づきました。

  • 軽い拒否(体をひねる、顔をそむける)
     → やり方を変えて、もう一度だけ試してみる
  • ★手を使って払いのける
     → そこでやめる

実際、つい先日も後ろから拭こうとして軽く嫌がられたので、前からやってみました。そうしたら手を使ってはっきり拒絶されたので、その日はやめました。

回数を数えるより、この見分け方のほうが実践しやすいと思います。★手が出たら、終わり。 それだけ覚えておけば大丈夫です。

もうちょっと、が危ないんだにゃ

猫の機嫌は、直そうとしなくていい

嫌がらせてしまった日、私はすぐにチュールとごはんをあげていました。早く機嫌を直してほしかったからです。

でも、あるとき気づきました。

それ、にゃん太のためじゃなくて、私の罪悪感を消すためだったかもしれない。

しかも嫌がった直後に興奮したまま食べるのは、たぶん体にもよくありません。

記録を見返すと、答えが出ていました

日記を並べてみたら、にゃん太は毎回、自分で戻ってきていました。

1回目 機嫌が直ってから、別の部屋までついてきた
4回目 距離は取るけど、手の届く範囲にいた
5回目 すぐ甘えてきた
6回目 その場を動かず、香箱座り
別の日 歯を拭かれた直後に「ごはんちょうだい」

一度も、機嫌が戻らなかった日がありません。

妻も言っていました。「それほど深く気にしていないと思う。その瞬間は嫌がってるけどね」

猫の機嫌は、人が直すものじゃなくて、猫が自分で戻すものなのかもしれません。だから私がやるのは、急いで機嫌を取ることではなく、少し間をあけることでした。

終わった後はべつに、そんなに気にしてないにゃ

やらない日を、どう決めるか

やらなかった日もたくさんありました。その理由を並べると、だんだん変わっていったのが分かります。

最初のころ : にゃん太が捕まらなかった      ← 猫の都合
少しあと : 家族が旅行でさびしかった後、甘えてきていた ← 状況
中ごろ : 家族が具合を悪くして、家がいつもと違った
       ★猫にとってもいつもと家の雰囲気が違う大変な一日だったはずだから
後半 : ★理由は何もない。今日はやめておこう
最近 : ★昨日しっかりやったから、今日は無理しない

最後の2つが、自分でも大きい変化だと思っています。

理由がなくても、やらない日があっていい。
そして、1日ごとに100点を目指さなくていい。

昨日しっかりできたなら、今日は軽くていい。今日だめだったら、明日ちょっとがんばればいい。何日かの流れで見れば、それで続きます。

毎日全力だと、折れます。

一人でやらなくても、いいと思います

やってみて、「やる」以外にも選択肢があると分かりました。

  • 今日はやる
  • ★今日はやらない
  • (頼める人がいれば)今日は頼む

一人でやるようになってから一度だけ、妻にお願いした日があります。「最近、拭けたり拭けなかったりだな」と思ったからです。妻がささっと拭いて、あっという間に終わりました。

でも、それは3つ目の選択肢がたまたまあっただけで、いちばん大事なのは2つ目だと思っています。

★やらない日を、自分で選べること。

正直に書いておきたいこと

私には、聞ける人がいます。

うまくいかなければ聞けるし、どうしてもだめなら代わってもらえる。それでも1か月半かかって、いまだに片側がうまくできません。

一人でやっている方は、もっと大変だと思います。

だからこそ――やらない日があっていいと、本気で思っています。

警戒される前に、動く

最近、にゃん太がウェットティッシュに手を伸ばしただけで、少し警戒することがありました。

「覚えたんだな」と思って妻に話したら、返ってきたのがこれです。

「警戒されたら、それはその時点で遅いのよ。警戒されないようにしないと。ウェットティッシュが警戒されるなら、前もって準備しておくとかね」

そして気づいたんです。妻の判断は、いつも”その手前”にあるということに。

「本気で噛まれる前に逃げている」    ← 噛まれる手前
「3回嫌がったら、そこでやめる」      ← 限界の手前
★「警戒されたら、その時点で遅い」   ← 警戒の手前

起きてから対処するんじゃなくて、起きる手前で動く。 これが、プロと私のいちばん大きな違いなのかもしれません。

3分が、30秒になりました

最初の頃に上手くいかなかったところも書きます。

始めた日、私たちは1回に3分かけていました。 2日目は1分。3日目はまた3分。

いまは、私一人で30秒から1分です。先にやるほうの歯、片方なら、10秒かからないこともあります(2番目にやる方の歯は、やっぱり時間がかかりますが)。

にゃん太が我慢する時間が、3分の1以下になりました。

……この1か月半で私ができるようになったのはここなんだと思います。すごく上手に磨けるようになったわけではありません。前より短く終われるようになっただけ。

それでも、猫にとってはそれがいちばん大きいはずです。

ただし、妻は15秒です

妻がやれば15秒で終わります。私は30秒から1分。まだ2〜4倍かかっています。

(始めた日は12倍の差があったので、それでも縮まったほうです)

右側は、いまだにうまくできません。唇をめくるのも、まだ苦労しています。

最初から守れていたことも、ひとつだけ

始めた日に、妻からこう教わりました。

「3回嫌がったら、そこでやめる」

5日目、歯ブラシを試した日のことです。妻が「指を噛まれそうだから歯ブラシにしよう」と言い出したのですが――口に入らないこと、3回。所要時間30秒。

妻はあっさり言いました。

「3回拒否されたから、今日はもう終わりにしよう」
「歯ブラシはにゃんちゃんの口には入らないかな〜」

自分で提案して、3回試して、撤回。 ちなみに「指を噛まれるのは?」と聞いたら、「ま〜、こうなったら噛まれてもしかたないかな〜」だそうです(笑)

そしてそのあと、にゃん太はすぐに甘えてきました。

★3回でやめれば、何も壊れない。 これは、今日から誰にでもできることだと思います。

そして、妻の結論

続けてしばらくして、妻に聞いてみました。「にゃん太、慣れると思う?」

「猫は多分、歯みがきには慣れないよ」

(もちろん、できる子もいるし、その子によるけどね)

……1か月半やって、「慣れない」が結論でした。

でも、不思議とがっかりしていません。

私は最初から「できなかったら仕方がない」くらいのつもりで始めたからです。前の記事のタイトルが、そのまま入り口でした。「できなくていい」。

★たぶん、それがよかった。

「絶対にできるようにする」と思って始めていたら、最初の1週間で折れていたと思います。できない日に落ち込んで、粘って、嫌がられて、やめていたはずです。

期待しなかったから、1か月半続きました。

また、「やらなくていい」に戻ってきました

9月の中ごろ、日記にこう書いています。

そもそもやらなくてもいい。を忘れないようにしよう。

1か月半前に自分で書いた記事の結論に、自分で戻ってきたわけです。

でも、出発点とは違います。

あのときは「できないから、できなくていい」でした。
いまは「ちょっとできるようになったうえで、やらない日を選んでいる」。

同じように見えて、立っている位置が違うんですよね。

猫は慣れません。私も、たぶんそんなに上手くなっていません。それでも続いています。

歯のためだけではないんだと思います。毎日その子に触って、口のあたりを見て、いつもと違うところがないか確かめる。歯みがきは、そのついでみたいなものです。

できた日は、少しうれしい。できない日は、なでて終わる。

1か月半やって、結局そこに戻ってきました。

まあ、やらない日があってもいいにゃ

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