犬と暮らすなら読んでほしい本|初心者の私が、専門家の妻の本棚から選んだ5冊【しつけ・行動学・まんが・絵本】

わん

犬と暮らし始めて13年。最初の頃の私は、正直に言うと「一発でうまくいく方法」を探していました。この本を読めば、このグッズを買えば、うちの子の困りごとが魔法みたいに解決する——そんな近道を、ずっと探していた気がします。

でも、動物看護師でトリマーの妻がよく言うんです。

「一瞬で良くなる魔法なんてないよ。ただただ、愛犬と、愛情をもって、地道にやっていくしかないの」

この記事では、そんな妻の本棚から借りて、初心者の私が実際に読んだ本を紹介します。しつけの名著から、まんが、絵本まで。「魔法」ではなく、その子と地道に向き合うための”地図”になってくれた5冊です。

読む前に——「古い本だけど、大丈夫?」

先に、ひとつだけ。これから紹介する本には、10年以上前に書かれたものもあります。「今読んでも大丈夫?」と思うかもしれません。

私はこう考えています。本質を突いた本は、時代を気にしない、と。犬という動物の本質——気持ちの読み方、信頼関係の築き方——は、そう簡単には変わりません。だから名著は、何年経っても色あせないんですね。

ただし例外もあります。食事、ワクチン、感染症、医療——このあたりは研究が進んで変わっている部分があるので、最新の情報や、かかりつけの獣医師の話を優先してください。本は「考え方の土台」として読むのがおすすめです。

① まずはここから『ダンバー博士の 子イヌを飼ったあとに』

犬について学ぶなら、妻が「まずこれを読んで」と言うのが、イアン・ダンバー博士のこの本。犬の育て方の”入り口”になる一冊です。

驚いたのは——私が一緒に通った訓練所のパピー教室の訓練士さんや、妻が犬の行動学を学んだ獣医さんの教えが、大体この本に書いてあったこと。つまりこの本の内容は、机上の理想論じゃなくて、現場のプロたちの共通言語なんですね。妻いわく「先生たちも、ダンバー博士に影響を受けている人は多いはず。みんなが納得して取り入れているからこそ、広まっている」と。

そして妻がこの本を一番評価しているのが——「叱らずに、犬が成功しやすい方向にそっと導く。それを、素人にも”できそう”と思わせる書き方が素晴らしい」という点。専門家が「初心者にもできる」と太鼓判を押す本、心強いですよね。

② 迎えたあとの実践に『イヌのしつけがうまくいくちょっとした本』

同じくダンバー博士の本で、こちらはタイトルの通り、犬を迎えたあと”どうすればいいか”が具体的に書かれた実践編

私が一番グサッときたのは、「叱る・押さえつける」のではなく、「おやつやおもちゃという”いいこと”とセットにして、正しい行動に導く」という考え方でした。

考えてみたら、当たり前なんですよね。できなくて嫌な思いをするより、できて良いことがあるほうがいい。良いことがあるから、できるようになる。——これ、人間だって同じじゃないですか。

でも「まったく叱らない」わけじゃない

ここで、ひとつ大事なことを妻に教わりました。私は「叱らないしつけ」と聞いて、「じゃあ悪いことをしても何も言わないの?」と思っていたんです。でも、違いました。

「まったく叱らなくていい、ってことじゃないよ」と妻。「悪いことは、悪いとしっかり教える。そうすれば犬はちゃんと改善する。犬はそんなにおバカじゃないから。——でも、叱り方が本当に難しいの

その”難しさ”を、具体的に教えてくれました。

  • 叱るなら、悪いことをした”その瞬間”に。あとからこんこんとお説教したり、グダグダ怒ったり、時間が経ってから叱っても、犬には何も通じない。「なぜ怒られているのか」が結びつかないから
  • 下手な叱り方は、逆効果どころか危険なことも。たとえば、お散歩中の拾い食い。下手に怒ると、犬は「取り上げられる前に、飲み込んでしまえ」という発想になってしまう。叱ったつもりが、もっと危ないことになる

「ちゃんと叱れる人は、なかなかいないよ」という妻の言葉が、印象的でした。基本は”叱らずに正しい方へ導く”。でも、伝えるべきことは、伝わる形で伝える。大事なのは「叱るか、叱らないか」じゃなくて、「その子に”伝わる”かどうか」なんですね。

……ちなみに、この「叱り方が難しい」という話、次に紹介する本を読むと、その理由がストンと腑に落ちます。

③ もう一歩踏み込む『ザ・カルチャークラッシュ』

ジーン・ドナルドソンのこの本は、②のあとに読む応用編。犬の目線、行動学に、もう少し専門的に踏み込んでいます。

タイトルの「カルチャークラッシュ(文化の衝突)」が示すのは——人間が、犬に人間の知性や道徳心を当てはめすぎること。それが、しつけの誤解や、犬への過剰な期待、ときには間違ったトレーニングを生んでいる、という警鐘が全編に流れています。

私は衝撃を受けました。だって最初の頃の私、「犬を人間社会のルールや道徳に当てはめるのが正解」だと思っていたから。「イタズラしたあと気まずそうな顔=反省してる」とか、思ってました。でも——違ったんです。

そして、②の「叱り方が難しい」の理由が、ここでつながりました。

犬は賢い。でも、人間じゃない。——あとから怒っても通じないのは、犬が人間のように「さっきのアレを反省しよう」とは考えないから。拾い食いを下手に叱ると逆効果なのも、人間の理屈(怒られた→やめる)を、そのまま犬に当てはめてしまうから。犬を”人間の小さいバージョン”だと思っていると、しつけは空回りする。この本は、それを教えてくれました。

「おやつでしつける」のも、犬を甘やかしているんじゃなくて、“犬という動物が学ぶ仕組み”に合わせているだけ。逆に「反省しているはず」と思い込むのが、擬人化。妻も言います。「アプローチは違うけど、”従わせる”んじゃなく”パートナーとして尊重する・犬の気持ちを理解しようとする”のは、3冊とも一緒だよ」と。

④ まんがで楽しく『DOG SIGNAL』

ここで一冊、まんがを。犬の行動学とドッグトレーナーを描いた『DOG SIGNAL』です。実は私、自分で見つけて読んでいたのですが、後日JKCの情報誌でも紹介されていて、ちょっと嬉しくなりました(笑)

とてもよく描かれていて、犬をめぐる社会の問題にもきちんと踏み込んでいます。もちろん、「ほぼ完璧なトレーナーが問題を解決する」という物語ならではの部分もあり、いろいろな見方はあると思います。でも、その主人公がそこに至るまでの過程もちゃんと描かれているので、私は好きです。

面白いのが、我が家では私がまんがで、まだ小さい息子がテレビアニメで楽しんでいること。犬を理解するきっかけが、家族それぞれにあるのっていいですよね。

ちなみに——クレヨンしんちゃんのシロや、タッチのパンチのような”人間っぽい犬”を可愛いと思う気持ちも、私にはあります。現実的じゃないと分かっていても(笑)。でも『DOG SIGNAL』が刺さるのは、あれが“人間っぽい犬”ではなく、”犬を犬として”描いているからなのかもしれません。③の本を読んだあとだと、そんな見方もできました。

⑤ そして絵本『どろんこハリー』

最後は、子どもの頃に読んだ絵本『どろんこハリー』。お風呂が大嫌いで、体を洗われる前に逃げ出してしまう犬のハリーのお話です。

正直、子どもの頃に特別お気に入りだったわけでも、内容をはっきり覚えていたわけでもないのに——なぜか、記憶に残っているんですよね。きっと、それだけ愛される名作なんだと思います。

そして今、犬と暮らす大人になって思い出すと——「ハリー、お風呂に慣れておこうね。飼い主さんにも責任があるよ」なんて思ってしまう(笑)。同じ本でも、子どもの頃と今とで、こんなに見え方が変わる。それも、犬と暮らした13年があるからですね。

(ちなみに、ハリーみたいにお風呂嫌いにさせないコツは、シャンプーやブラッシングの記事にまとめています)

犬のシャンプーのやり方完全ガイド|初心者でも失敗しない手順とコツ
犬のシャンプーを初めてでも失敗しない手順とコツを解説。シャンプー剤の選び方・洗い方・乾かし方・嫌がる子への慣らし方・セルフシャンプー台の活用まで、初心者さんが安心して始められるようにまとめました。

本は「魔法」じゃなくて「地図」

5冊を読んで、私が一番わかったこと。それは——本は、魔法じゃないということでした。

読めば一発で解決、なんてことはない。冒頭の妻の言葉、「魔法なんてない。愛情をもって地道にやるしかない」の意味が、今はよくわかります。本は、その”地道”を、正しい方向に導いてくれる地図なんです。

こんな話を思い出します。妻が犬のことを学び始めた頃、お世話になったある先生の奥様に、こう言われたそうです。

「ここでつまずきたくない、という練習があるなら、そこの導入だけでいいから、最初に1000回やってみて」

嫌味でも、根性論でもなく、ごく普通にそう教えてくれたそうです。妻はそれを聞いて、こう思ったと言います。

「”1000回”って普通に言えるの、かっこいい。日常にすればいいんだ。1日10回なら、100日で終わる。それなら うちの子にも負担にならないし、きっと楽しんでやってくれる。——やるわ」

私は、この話が大好きです。「地道にやる」って、暗くて辛いことみたいに聞こえるけど、そうじゃない。1日10回、その子と楽しみながら、100日。気づいたら、できるようになっている。しかも、犬の負担にならないように、楽しめるように考えてあげる——その中に、ちゃんと愛情がある。

最後に——一番の先生は、あなた自身

たくさんの本を紹介しましたが、最後に、妻の言葉をもう一つ。

「どんな先生より、飼い主さん自身が、一番その子を理解できる場所にいるんだよ。それを忘れないで。——絶対に、うちの子のことは私が一番よくわかってるもん」

本を薦めておいてなんですが(笑)、これが結論です。名著も、プロの先生も、“あなたがその子の一番の理解者になる”ための道具。本を読み、プロに教わるからこそ、私たちは「一番よく理解できる環境」を自分で作れるんです。

ちなみに我が家は、今も うちの子たちを連れて訓練所に通っています。私も、行ける日は一緒に。学びに終わりはなくて、それは”暮らし”そのもの。今日もまた、家族で通ってきます。

さあ、まずは1冊。あなたとその子の”地図”を、手に取ってみませんか。

名著のため、中古はタイミングで品切れ・価格変動があります。図書館で借りられることも多いので、気軽に手に取ってみてください。

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