わが家には、犬が2匹と猫が1匹います。
ごはんは、ずっと別々にあげてきました。犬には犬のごはん、猫には猫のごはん。当たり前のようにそうしてきたのですが——なぜ別なのかを、私はちゃんと考えたことがありませんでした。
「同じ肉なんだから、そんなに変わらないんじゃないの?」
そう思って、動物看護師でトリマーの妻に聞いてみました。返ってきたのは、想像よりずっと根の深い話でした。
この記事を読むとわかること
- 犬と猫で、ごはんが違う理由
- お互いのごはんを食べてしまったら、どうなるか
- 同じ家で、ごはんをどう分けるか
- 結局、何を見て選べばいいのか

うちの子たちは、もう知っていた
理屈の前に、うちの話から書かせてください。
猫のにゃん太は、犬たちのごはんを狙いません。 一度も、というと言いすぎかもしれませんが、少なくとも私は見たことがない。
妻が、にゃん太に向かって言っていました。
「にゃんちゃんのごはんのほうがおいしいからね〜。わざわざはるとく~のごはんは食べないよね〜」
逆はどうか。犬たちは、猫のごはんを狙います。
く~は、自分のごはんの食いつきが悪い日でも、にゃん太のごはんには行きます。妻に止められると「ふぇ〜ん、すいませ〜ん」という顔をして、やめる。
はるはもっと巧妙でした。私たちの前では、絶対に狙わない。 でも私たちがいないときに狙って、食べる。そして戻ってくると「食べてないわん」という態度をとるのです。
——つまり、答えはもう出ていたわけです。
猫のごはんのほうが、”ごちそう”だった。 成分表を見なくても、当人たちが知っていました。

ぼくのごはんのほうがおいしいにゃ。わざわざはる君やく~のごはんを食べる理由がないにゃ。
猫には、自分で作れないものがある
では、なぜ猫のごはんは”濃い”のか。
猫は真性肉食動物といって、獲物から栄養を得ることを前提に体ができあがっている動物だそうです。だから、犬なら体の中で作れるものが、猫では作れないことがあります。
代表的なのがタウリンです。
タウリンが足りないと、目(網膜が変性して視力が落ちる)や心臓に問題が出ることがあるとされています。しかも猫は、タウリンを毎日使って体の外へ出していくのに、自分ではほとんど作れない。だから食べ続けなければならない。
犬は、材料になるものからタウリンを作ることができます。ここが決定的に違います。
ほかにも、猫が食事から摂らなければならないものはいくつかあります。名前を並べても仕方がないので省きますが、要するに「猫は、外から入れなければならないものが多い」ということでした。
そして、ここで妻がしてくれた話が面白かったので、書いておきます。かかりつけの獣医さんが話していたことだそうです。
「肉食動物にとっては、内臓がいちばんのごちそうなんだよ。特に腸がいい」
「腸の中には、これから排泄物になる草がたくさん入っているでしょう。それも良いんだ」
——では、肉食動物とはいったい何なのか。
その獣医さん自身が「あくまでも雑談だけどね」と笑っていたそうです。答えの出ない話ですが、私はこれを聞いて、「肉を食べる動物」というイメージが、ずいぶん雑だったなと思いました。
犬は、人と暮らすうちに変わった
犬の話をしていたとき、妻がふと言いました。
「犬のだ液には、炭水化物の消化酵素がないの。すい臓から出るのよ」
人は、噛んでいる段階からデンプンの分解が始まります。でも犬には、その仕組みがない。よく噛まずに飲み込むのも、それと関係があるのかもしれません。
ただ、それで「犬は炭水化物を消化できない」ということにはならないようでした。犬は膵臓と小腸で、きちんと消化できる。
さらに調べていて、驚いたことがありました。
犬は、オオカミよりもデンプンを消化しやすくなっているそうです。関係する遺伝子の数が、オオカミの7倍ほどあるという研究がありました。人のそばで暮らし、人の食べ残しを利用できたことが、家畜化の過程で有利に働いたと考えられているとのこと。
(ただし犬種や個体による差も大きいそうなので、「どの犬も炭水化物に強い」という話ではありません)
——犬は、人と暮らすうちに、体が変わっていった。
一方で、猫について妻はこう言っていました。
「そもそも猫は、自由に生きてきたからね。犬のように人の言うことを聞いて生きてきた生き物ではないから」
一緒に暮らしてきた歴史が違う。だから、体が違う。だから、ごはんが違う。
私にとっては、ここが今回いちばんの発見でした。

ぼくたち犬は、人のごはんのおこぼれで生きてきた時代があるんだって〜。
だから、名前まで違います
このことに気づいたのは、家族でペットショップに行ったときでした。
並んでいるフードを見ながら、私は妻に聞きました。「猫にはK9はないの?」すると妻は同じパッケージの猫版を見せてくれて、
「これが猫のK9だよ。名前は違うけど、パッケージのデザインは一緒でしょ。同じ会社のやつ」
「K9って、犬のことなのよ。だから猫のごはんにはその名前は使えないよね」
K9 は「canine(犬)」のこと。だから猫用は、別の名前になっています。
同じ会社が、犬用と猫用でわざわざ名前を変えて作り分けている。 これって、中身が違うことの、いちばん分かりやすい証拠だと思いませんか。
しかもこれは、お店で実物を確認できます。今度ペットショップに行ったら、犬用と猫用のコーナーを見比べてみてください。同じデザインで、名前だけ違うシリーズが見つかるかもしれません。
お互いのごはんを食べてしまったら?
これは、多くの方が心配することだと思います。私も心配でした。
結論から書くと、一口食べてしまった程度なら、たいていは大きな問題にならないようです。健康な子であれば、ですが。
問題になるのは、それが主食になってしまったとき。
妻もこう言っていました。
「犬と猫がお互いのごはんを食べても問題はないけど、食べ続けると、必要なものが違うから、栄養的に不足することになるよ」
猫が犬用のごはんを食べ続ければ、さきほどのタウリンなどが足りなくなる可能性があります。
逆に、犬が猫用を食べ続けるのも良くありません。猫用は犬用より高たんぱく・高脂肪・高カロリーになりやすいので、体重が増えたり、体質によっては消化器や膵臓に負担がかかったりすることがあるそうです。
一回で慌てなくていい。でも、続けさせない。 そういう理解でいいのだと思います。
わが家の、ごはんの分け方
では、どうやって防ぐか。わが家がやってきたことを書きます。
【実体験】
- 犬たちのごはんは、低い位置に。猫のごはんは、高い場所に。
- 犬たちが食べているあいだは、妻がそばで見ている(く~がはるのごはんに行こうとしたら、止める)
- く~が食べずに、こちらが目を離すと——はるがそれを狙う(そして食べてない顔をする)
- 迎えたばかりの頃は、はるとく~をケージやバリケンに入れて、お互いのものを食べられないようにしていた
やってみて思ったのは、結局は「届かないようにする」ということでした。
しつけでどうにかしようとするより、そもそも届かない場所に置く。そのほうが、犬も猫も、そして人も、無理をしなくて済みます。
叱らずに済む環境を先に作る——このブログで何度か書いてきたことと、たぶん同じ話です。

ぼくは、見てるときはぜったいに近づかないんだわん。……見てないときのことは、おぼえてないわん。
「猫は魚が好き」は、本当?
もうひとつ、猫について書いておきたいことがあります。
「猫は魚」というイメージ、ありますよね。でも妻は、こんな話をしていました。
「猫は魚だろって、刺身ばっかりあげてると、病気になることがあるよ」
黄色脂肪症と呼ばれるもので、栄養が偏ることで体の脂肪が黄色くなり、体が硬くなってしまうことがあるそうです。漁港の猫がなることがある、と聞きました。
もちろん、魚を食べたら必ずそうなるという話ではありません。偏り続けたときの話です。
ただ、「猫=魚」というイメージだけで手作りごはんを続けるのは、思っているより危ないのかもしれません。総合栄養食が、いかによく考えられているかという話でもあります。
結局、何を見ればいいのか
ここまで、犬と猫がどれだけ違うかを書いてきました。体のつくりも、必要な栄養も、歩んできた歴史も違う。
では、猫のフードを選ぶときは、犬とまったく違う見方をしなければいけないのか。そう思って、妻に聞いてみました。
返ってきた答えは、拍子抜けするくらいシンプルでした。
「まずは、食べるか。吐かないか。だから基本は、犬と変わらないかな」
体はまったく別の生き物なのに、飼い主が見るところは同じ。
——でも、考えてみれば当たり前なのかもしれません。栄養の設計は、フードを作る人たちがやってくれています。私たちがやるのは、うちの子がそれをちゃんと食べて、元気でいるかを見ること。
そして、そのために必要なのは、たぶん毎日ちゃんと見ていることだけなんだと思います。

むずかしいことは、パパたちが考えればいいにゃ。ぼくは、おいしいごはんが出てくれば、それでいいにゃ。
犬のごはん、猫のごはんの具体的な選び方については、こちらにまとめています。






また、猫の「食べるか、吐かないか」を見ていくうえで、口の中の話も無関係ではありませんでした。



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