わが家には、2026年9月で13歳になる猫がいます。にゃん太といいます。道端で弱っていたところを保護した、元保護猫です。
生まれた日は分かりません。「たぶん9月のはじめだろう」ということで、私たちの9月の結婚記念日と同じ日を、にゃん太の誕生日にしました。(笑)
そのにゃん太に、私は一度も歯みがきをしたことがありませんでした。
犬たちには、妻が歯みがきをしています。でも猫は、なんとなく「難しいらしい」と聞いていて、初期にある程度の期間、妻が試みた後、そのままになっていました。
今回、猫の歯みがきについて書こうと思って、動物看護師でトリマーの妻に聞いてみました。返ってきた答えが、これでした。
「猫に歯磨きするのは難しいよ。ほとんどできない」
プロが「できない」と言う。じゃあ、自分でやってみようと思いました。
これは、その記録です。
この記事を読むとわかること
- プロが「猫の歯みがきは難しい」と言う理由
- 素人が実際にやってみて、どうなったか
- 磨けないときに、代わりにできること
- やめどきの決め方
- 磨けなくても、いちばん大事なこと

プロは「できなくても仕方がない」と言った
まず、妻の立場をはっきりさせておきます。
猫の歯みがきについて、妻はこう言っています。
「猫の歯磨きに関しては、できなくっても仕方がないって私は思ってる」
歯みがきができない飼い主さんに対して、残念だとか、努力不足だとか、そういう感情はまったくないそうです。むしろ「普通はできないよ、仕方がない」と。
ただし——ここには線引きがあります。
「療法食や薬を止めるのとは意味が違うよ」
療法食や、先生から出された薬。これは別の話です。歯みがきは「できなくても仕方がない」けれど、療法食と薬は、勝手にやめてはいけません。
そこだけ、先に書いておきます。
実際にやってみました(全5回の記録)
「難しい」と言われて、じゃあどのくらい難しいのか。にゃん太の歯磨きを試みてみました。
犬と同じように、いきなり歯ブラシではなく、触るところから。使ったのは赤ちゃん用のウェットティッシュ(アルコールや防腐剤の入っていない、水99%のもの)です。妻に「専用のシートを買ったほうがいい?」と聞いたら、「うちにあるので大丈夫、私も使ってるから」とのことでした。
※ウェットティッシュなら何でもいいわけではありません。アルコールや香料が入っているものもあるので、成分は確認してください。ペット用の歯みがきシートを買うのも、もちろんいい選択です。
1回目|奥歯まで届いた。でも——
抱っこして、なでながら、ごはんで気を引きながら。3分ほどで、奥歯までウェットティッシュで拭くことができました。
初回としては上出来です。……が、途中でにゃん太のご機嫌が斜めになりました。
静かな部屋で二人きりになって、しばらく撫でていたら、1〜2分で機嫌が直りました。最初は警戒されましたが、私が別の部屋に移動したらついてきた。ああ、大丈夫だな、と思いました。
2回目|奥歯を触れず、できなかった
犬歯までは拭けました。でも奥歯が問題でした。一人だと、体を押さえながら唇をめくることができない。昨日はなんとかできても、今回はできなかった。
にゃん太が怒り始めて、妻が「そこまでにしておきな〜」と私を止めました。この間1分くらい。
3回目|夫婦二人がかりでも、できなかった
そこで次の日、私から頼みました。「二人でやってもいい? 協力お願いできる?」
妻が上手に保定してくれて——それでも、私が唇をうまくめくれずに断念。今度は私が保定側にまわってみましたが、これもうまくいかない。にゃん太が怒って、終了。
プロが手伝っても、二人がかりでも、できませんでした。この一連の流れで3分くらい。
妻が言いました。
「ね、猫の歯磨き難しいでしょ。そう簡単にはできないのよ」
4回目|30秒だけ、成功
やり方を変えました。私が後ろからかぶさるようにして、両手でにゃん太の前足をそれぞれ持って保定。妻が口を開けて、奥歯をウェットティッシュで拭く。
30秒ほどで、奥歯まで届きました。
妻の評価は、こうです。
「こんなんだと、すでにできている歯石は取れないけどね。歯の汚れは最低限取れるし、しないよりはましかな」
そのあと、にゃん太は少し警戒しました。撫でてもごろごろ言わない。少しだけ距離を取ろうとする。でも手の届かないところには行かず、近くにいました。しばらくすると、いつも通りに戻りました。
5回目|歯ブラシは、3回のチャレンジで終了
妻が「次は歯ブラシにしよう、指を噛まれそうだから」と言うので、歯ブラシで挑戦。
結果は——口に入らないこと、3回。所要時間、30秒。
「3回拒否されたから、今日はもう終わりにしよう」
妻が引き際を決めました。そして、こう言いました。
「歯ブラシはいらないかな〜」
自分で提案して、3回試して、撤回。ちなみに「指を噛まれるのは?」と聞いたら、「ま〜、こうなったら噛まれてもしかたないかな〜」と軽く言っていました。(笑)
そのあと、にゃん太はすぐに甘えてきました。これには安心しました。
そして、やらなかった日
翌日は、歯みがきをしませんでした。
無理やり連れてくればできます。でも、それはしたくなかった。夫婦とにゃん太が自然にそろったときに、するっと始めたいと思っています。

ぼくは口をさわられるの、好きじゃないにゃ。でもパパはしつこくないから、まあいいにゃ。
失敗して分かった、いちばん大事なこと
5回やってみて、技術以上に大事だと思ったことがあります。
1回目に、にゃん太が嫌がった理由を考えました。口を触られたことは、もちろんあります。でも、それだけじゃない気がしたんです。
抱っこして、なでながら、歯を拭いた。
にゃん太にとって、抱っことなでなでは「いいことだけが起きる時間」だったはずです。そこに、別の用事が混ざった。
もうひとつ、あとから気づいたことがあります。歯みがきのあと、私はにゃん太を撫でながら「大丈夫かな、怒ってないかな」と、少し緊張していました。
なでなでに、自分の不安まで混ぜてしまっていたんです。
これ、以前に妻が獣医さんから教わった話とつながります。犬のはるは雷や花火が苦手だったのですが、そのとき言われたのが「飼い主がワタワタしてはいけない。普段どおりに過ごすこと」でした。
歯みがきそのものより、そのあとの撫で方のほうが大事かもしれない。 そう思っています。
なぜ猫は、こんなに難しいのか
「子猫のうちから慣らせば、猫でもできるようになる?」と妻に聞いてみました。
返ってきた答えは、私の想像を超えていました。
「難しいと思う。犬のようにはいかない。猫ってそんな感じじゃないの」
「そもそも猫は、自由に生きてきたからね。犬のように人の言うことを聞いて生きてきた生き物ではないから」
——そういうことだったのか、と思いました。
犬は長い時間をかけて、人と一緒に働き、人の言うことを聞くように育ってきた動物です。猫は、そうではない。
つまり、猫が歯みがきをさせてくれないのは、技術の問題でも、しつけの問題でも、飼い主の努力不足でもない。
猫が、猫だからでした。
もちろん「やらせてくれる猫もいるかもしれない」とも言っています。そこはその子次第。でも、できなくて当たり前の生き物なんだ、と知れただけで、私はずいぶん気が楽になりました。

ねこは、ねこだからにゃ。
でも、猫の口のトラブルは小さくない
「できなくていい」と書きましたが、何もやらなくていい、という意味ではありません。
妻の話をまとめると、こうなります。
- 猫は虫歯にはならない。でも歯肉炎にはなる
- 歯周病は、大きな問題
- 口内炎は、本当に多い
- 抜歯が必要になる子も、それなりにいる
- ただし「猫はごはんを丸呑みするので、犬と比べると、人が思っているよりは深刻ではない場合もある」
猫免疫不全ウイルス(FIV)に感染している子は、口内炎が起きやすく、治りにくいこともあるそうです。ひどくなると、ごはんが食べられなくなることもあります。
ただし、FIV陽性の猫が必ず重い口内炎になるわけではありませんし、陰性でも治りにくい口内炎になる猫はいます。
[猫を迎える準備|最初にやること・必要なもの]


磨いても防げない病気も、あるようです
調べているうちに、「歯の吸収病巣(FORL)」という病気を知りました。虫歯でも歯周病でもなく、歯が内側から溶けていく、猫に特有の病気だそうです。痛みも伴う。
妻に聞いてみました。
「それは知らないな。見たこともない」
動物病院で働いていた妻が、です。意外でした。妻はこう言いました。
「歯に詳しい先生のホームページを見てみな」
言われたとおりに読んでみると、歯科に力を入れている動物病院では、よく知られた病気のようでした。猫の3〜7割が生涯のどこかで経験するとされること。レントゲンを撮らないと見つけにくいこと。そして——原因がはっきりしていないので、確実な予防法もないこと。
その話をしていたら、妻がふと言いました。
「それ、私がいた頃は”歯周病”として扱ってたんじゃないかな」
調べてみると、そのとおりでした。この病気はかつて虫歯や歯周病の一部として理解されていて、独立した病気として整理されたのは比較的最近のことでした。妻が設備が整った大きな動物病院を辞めたのは、15年以上前です。
——知識は、古くなる。そして本人でも、それには気づきにくい。
私も調べてみましたが、正直詳しいことは分かりません。ここに書けるのは「そういう病気があるらしい」という入口だけです。
でも、こう思いました。プロでも見つけにくくて、しかも情報は更新されていく。だったら、自分たちだけで把握するのは無理だ。

ぼくは毎日みがいてもらってたけど、それでも歯石はついちゃったんだわん。ぜんぶ防げるわけじゃないんだわん。
歯みがきができないときの、ほかの手
歯みがきシート、デンタルジェル、デンタルフード、飲み水に混ぜるタイプ。いろいろあります。妻の評価は、正直でした。
「正直、特におすすめはしないけど、試したい人は試してみてもいいよ」
「処方を目の前で見てきたけど、格段に良くなることはない。やらないよりは良いのかな? それもその子によるし、程度による」
「歯磨きが一番。でも、それが難しい」
ちなみに、療法食を食べている子には、デンタルケアのふりかけタイプもあるそうです。
わが家が、飲み水に入れるタイプを使わない理由
にゃん太は、結石の療法食を食べています。だから妻はこう言いました。
「薬が入った水を飲んで、何か嫌になって、水を飲むのが減ると嫌なの。無味無臭とは書いてあるけど、猫も匂いには敏感だからね」
ふりかけタイプについても、同じことを考えています。それをかけたせいで、いつものごはんまで食べなくなったら困る。
つまり——口のためにやったことで、もっと大事なもの(水とごはん)を失うかもしれない。だから使っていません。
逆に、水に入れているものもあります
じつは、たまに水に入れているものが、ひとつだけあります。ちゅ〜るです。
かかりつけの先生から、「お水をたくさん飲ませたい場合は、お水にちゅ〜るを少しだけ入れてみて」と教えていただきました。実際にやってみたら、にゃん太は気に入って、よく飲みました。ただし、これも水を飲ませたいときだけにしています。
同じ「水に何かを入れる」でも、判断が逆になっています。でも基準は同じなんです。にゃん太が、水を飲むかどうか。

お水にチュールが入ってるのは、わるくないにゃ。
やめどきは、飼い主が決めていい
「どこまでやったら、やめていいの?」——これも聞きました。
その日の判断
「猫が怒ったら止める。無理に続けない。次の日以降にすること。犬と同じ」
実際、5回目は「3回拒否されたから終わり」でした。回数で決めるのは、分かりやすくていいと思います。
歯みがきそのものをやめる時期
「止めたい、と飼い主さんが判断したとき」
プロが「あなたが決めていい」と言っています。
デンタルの水やフードをやめるとき
「水やごはんに混ぜた際に、水、及びごはんの摂取が減ってしまったとき」
そして妻は、現実的なことも言っていました。
「大体、飼い主さんがあきらめた時と、『お金がかかるからもういい』と判断した時。それがもう一つのやめるときだよ」
責めるでもなく、ただ「そういうもの」として。
【追記】なぜ「止める」のか
このあと、妻からもうひとつ大事なことを教わりました。保定を無理に続けてはいけない、という話です。
「無理やりの保定は、猫がパニックになる。パニックになると、場合によってはショック死することもあるから」
「パニックになると、どうにもできなくなるケースもある。動物はパニックから死に至ることがあるのを、忘れないで」
妻が保定中に「今日はここまでにしておくか」と言うのは、そのためでした。私はずっと「嫌がっているから」だと思っていましたが、そういう話ではなかったのです。
強く嫌がったら、そこで止める。 歯みがきは、それを押してまでやることではありません。
⚠️ 無麻酔の歯石取りについて
ひとつだけ、強めに書いておきたいことがあります。
麻酔をかけずに歯石を取る、というサービスがあります。これについて妻に聞いたら、返ってきたのは即答でした。
「あり得ない。危険だよ。まともな先生なら、麻酔なしで歯石を取ろうなんてしない。それで本当にしっかり安全に施術なんて、できないよ」
「しかも、先生以外がやる場合なんてもってのほか」
獣医師以外が行うことについては、問題が指摘されています。気になる方は、かかりつけの先生に相談してみてください。
磨けなくても、できることがある
では、歯みがきができない私たちには何ができるのか。妻の答えは、こうでした。
見るポイント
- 口を開けて、唇をめくる
- 歯ぐきが赤くなっていないか、腫れていないか
- 歯石は白いか茶色いので、見れば分かる
「嫌がられずに見るコツは?」と聞いたら、答えは一言でした。
「嫌がられない見方は、ない」
コツはない。 それが本当のところのようです。
でも、現実はこうです
「飼い主さん、普段は猫の口の中なんてまず見ないよね」
「ごはんを食べなくなることが、まず発見の第一歩。動物病院に行って”口内炎ですね”って言われる。これが一番よくあるパターンかな」
だからこそ、と妻は続けました。
「できることなら毎日、口の中と目を見る、耳とお腹を触る。お腹に関しては、おしっこが詰まって膀胱がパンパンになったり、乳がんでしこりができているかもしれないから」
「見たり触って分かるの?」と聞いたら、こう言われました。
「わかるかもしれないし、わからないかもしれない。でも、毎日見て触れば、違いがわかるようになる確率は上がるよ」
そして、もうひとつ大事なこと
猫は、口を触られること、手を掴まれること、保定されることを嫌がります。これは歯みがきに限りません。
「だから、すべての施術が大変なの。病院でも、健康診断で”今日は触診だけ”、”血液検査までできた”、”エコーとレントゲンまでいけた”って、その子のその日の状態で変わるんだよ」
——にゃん太が、まさにそれです。
つまり、毎日触られている猫は、病院でも触らせてくれる可能性が上がる。だから検査ができて、見つかる。触られ慣れていない猫は、触診で終わってしまうかもしれない。
毎日のなでなでが、そのまま「受けられる医療の範囲」を決めている、ということでした。
[動物病院の選び方|初めてでも失敗しないポイント]

毎日の触れ合いと、信頼関係
妻の話は、最後にここへ着きました。
「だから、毎日の触れ合いと信頼関係が大事なんだよ」
思い返すと、妻はずっと同じことを言っていました。マダニの記事のときも「普段からたくさん撫でて、触って、ブラッシングして。これで気づく」と言っていた。ブラッシングの記事でも、そうでした。
猫の歯みがきの答えが、「毎日なでること」だった。
私は、いまもにゃん太の歯みがきを続けています。うまくいく日もあれば、3回で終わる日も、まったくやらない日もあります。
でも、ひとつだけ決めていることがあります。
歯を守るために、にゃん太との関係を壊さないこと。
抱っこが警戒されるようになったら。ごはんの場所に来なくなったら。そのときは、やめます。それは歯が汚れるより、ずっと困ることだから。
歯みがきができなくて悩んでいる方に、妻の言葉をもう一度置いておきます。
「猫の歯磨きに関しては、できなくっても仕方がないって私は思ってる」
できなくても、大丈夫です。そのぶん、たくさん触ってあげてください。

はみがきはいやだけど、なでてくれるのは好きにゃ。それはずっと続けてほしいにゃ。
[犬の歯みがきの続け方|嫌がる子も毎日続けるコツ]



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