犬と暮らしていると、避けて通れないのが抜け毛。床に、服に、気づけばそこら中に。特に換毛期は「昨日掃除したばかりなのに…」とため息が出ますよね。
正直に言うと、私は最初、抜け毛のことを何も分かっていませんでした。「ふわふわの犬は毛が抜けて、短い毛の犬は抜けない」——そう思い込んでいたんです。でも、これが大きな勘違いでした。
この記事では、動物看護師でトリマーの妻に教わった、抜け毛の仕組みと対策をまとめます。そして最後に、私が予想もしなかった妻の答えも。

抜け毛は「困りごと」の前に、体のはたらき
そもそも、なぜ毛が抜けるのか。体温を調節するために、毛を入れ替えているからです。
犬は人のように汗で体温を下げるのが得意ではありません。だから、暑い季節に向けては涼しい毛へ、寒い季節に向けては暖かい毛へと、季節に合わせて毛を”着替える”。これが換毛(かんもう)で、春と秋に抜け毛が増えるのはそのためです。
つまり抜け毛は、故障でも異常でもなく、体がちゃんと働いている証拠なんですね。
室内犬は、一年中少しずつ抜けることも
ただし、こんな声もよく聞きます。「うちの子、季節に関係なく一年中抜けてるんだけど…」
これも、おかしなことではありません。完全室内で暮らす子は、外の気温や日照の変化を感じにくいため、換毛のタイミングがずれたり、年間を通じて少しずつ抜けたりすることがあるからです。「春と秋だけのはずなのに」と心配しなくて大丈夫。
「ふわふわだから抜ける」は勘違いでした
さて、冒頭の私の勘違いの話です。
犬の被毛は、大きく2つに分けられます。
- シングルコート——上毛(オーバーコート)だけの一層。抜け毛は比較的少なめで、寒さには弱い傾向
- ダブルコート——上毛+下毛(アンダーコート)の二層。春と秋にアンダーコートがごっそり抜ける。寒さには強い傾向
私はずっと、「ふわふわ=ダブルコート、短毛=シングルコート」だと思っていました。でも実際は——
- プードルやビションは、あんなにモコモコなのにシングルコート(だから抜け毛が少ない)
- 柴犬やラブラドール・レトリバーは、短い毛なのにダブルコート(だからごっそり抜ける)
見た目と、毛の構造は別モノだったんです。知ったときは本当に驚きました。
わが家は、2タイプがそろっています
実はわが家、シェルティーのはるがダブルコート、プードルのく~がシングルコート。同じ家の中に、両方いるんです。
そして本当に、抜け方がまったく違います。はるたは換毛期になるとごっそり抜けるのに、くうたはほとんど抜けない。
でも——「抜けないから手がかからない」わけではないんですよね。くうたは毛が伸び続けるので、定期的なカットが必要ですし、もつれや毛玉にも気をつけないといけません。抜けるか抜けないかは、手間の”量”の違いではなく、”種類”の違いなんだと思います。
ちなみに——なぜ犬種で違うんだろう?と考えていて、ふと思ったんです。プードルはもともと水辺での猟を手伝っていた犬。水に入るなら、乾きにくい下毛がない方が都合がいいのかも、と。もちろん犬種の成り立ちは、寒さへの適応や役割などいろいろな理由が重なった結果なので、これだけで説明できるわけではありませんが……そう考えると、少し腑に落ちた気がしました。
※シュナウザーやテリア系のように、針金状の硬い毛(ワイヤーコート)を持つ犬種など、2つにきっちり分けにくい子もいます。うちの子がどのタイプか分からないときは、トリマーさんや獣医さんに聞いてみると確実です。
抜け毛対策の基本は、やっぱりブラッシング
対策と言っても、特別なことはありません。妻の答えはシンプルでした。
「先にブラッシングで抜け毛を取っておく。あとは掃除機とコロコロ。地道にやるしかないよ。これに関しては裏ワザはないの」
……身も蓋もないですが(笑)、これが真実。床に落ちてから追いかけるより、落ちる前に取ってしまうのが一番効率的なんですね。
ブラッシングのやり方や道具選びは、こちらの記事で詳しくまとめています。

そして妻が付け加えたのが、こんな言葉でした。
「大事なのは、早いうちからブラッシングに慣れてもらうこと。お手入れは痛くないし、怖くないって分かってもらう。ブラッシングをコミュニケーションのツールにするの」
抜け毛を”処理する作業”ではなく、その子とのふれあいの時間にしてしまう。これが結局、一番続くやり方なんだと思います。
アンダーコートを取る道具について
換毛期には、アンダーコート(下毛)をごっそり取るタイプの道具が役に立ちます。妻も使っていて、細かめと粗めの2種類を使い分けていました。
このタイプで有名なのは「ファーミネーター」ですが、妻に聞いてみると、意外な答えが返ってきました。
「実は私、ファーミネーターはあまり使ったことがないから、正直よく分からない(笑)」
ただ、“毛が切れやすく感じる”という理由で使わないトリマーさんもいて、代わりに”ディシェッダー”と呼ばれるタイプを使う人もいる、と教えてくれました。妻自身が使っているのは、トリマーの先輩に勧められた海外メーカーのものと、トリミング用品の卸業者から買った、メーカー名も分からないもの。
「これいくらだった?」と聞いたら、「うーん、4,000円くらいかなあ。ごめん、分からない(笑)」。プロでも、道具のブランドや値段を細かく覚えているわけではないんですね(笑)

これを覚えてないのが、うちのママらしいね〜
つまり——プロでも道具の好みは分かれるし、有名な物・高い物だけが正解でもない。まずは「アンダーコートを取るタイプ」を1本試してみる、くらいの気持ちでいいと思います。
⚠️ ただし、共通の注意点がひとつ。
「やりすぎ注意。毛が貧相になることがあるよ」
ごっそり取れるのが気持ちよくて、つい何度もやってしまいがちですが、そこは”ほどほど”に。
【妻監修】
妻が使っているのは上のタイプですが、正直いいお値段です。「最初からこれを買うのはハードルが高いよね」という話を妻としていて、安価なタイプを見せて聞いてみました。
返ってきた答えは「入り口としては良いと思う」。
まずは試してみて、続きそうならちゃんとしたものへ——という順番でいいみたいです。
⚠️ 夏のサマーカット、その前に
暑い季節、「毛を短くしてあげたら涼しいかな」と考える方も多いと思います。でもここは、妻が特にはっきりと言っていた部分でした。
「ダブルコートの子のサマーカットは、おすすめできない」
柴犬、ロングコートのダックスやチワワなど、もともとカットを前提としていない犬種が対象です。(トリミングサロンでは「グルーミング犬種」と呼ばれる、定期的なカットが要らないタイプの子たちですね)
理由は、こうです。
- 毛質が変わってしまうことがある
- 上手に伸びてこなくなることがある
- 特にポメラニアンの脱毛症には注意が必要
- そもそも、毛には生え変わりの周期があり、伸びが止まる時期に切ると、生えてこなくなる場合がある
妻は「ダブルコートの子はサマーカットに限らず、普通のカットもおすすめしない」と言っていました。
とはいえ、これは知らずにやってしまう方がとても多いことでもあります。妻も、サマーカットを希望されたお客さまには、必ず説明をするそうです。
もし「夏だし短くしようかな」と考えているなら、切る前にトリマーさんに一度相談してみてください。うちの子の犬種や毛質なら大丈夫なのか、プロが判断してくれます。
※シュナウザーなど、カットしてもよい犬種もあります。ただしその場合も、繰り返すと本来の硬い毛質が保たれにくくなるなど、犬種ごとの事情があります。この話は長くなるので、また別の記事で。
【追記】サマーカットをやめた子に、会いました
この記事を書いたあと、妻のサロンに来ている柴犬の子の話を聞きました。
その子は、以前は一年中サマーカットにしていたそうです。妻が「やめてみませんか」と提案して、数か月前からカットをやめました。
そして先日、その子がまたトリミングに来たとき、妻はこう言っていました。
「状態が良くなって良かった」
私は正直、記事に書いた「サマーカットには注意が必要」という話を、知識としてしか知りませんでした。でも、実際にやめた子の毛が良くなった——それを見て、ようやく腑に落ちた気がします。
そして、ダブルコートを見せてもらいました
その日、妻がサロンに私を呼んでくれました。
状態が良くなった子だから、いま見れば分かりやすいはず——そう思って呼んでくれたようです。
トリミングが終わった柴犬の子を触りながら、「これがダブルコートだよ」と教えてくれました。
この記事の前のほうで、「シングルコートとダブルコートは、見た目では判断できない」と書きました。まさにそれを、しっかりと隣で教わった形です。
上のほうにある硬めの毛(オーバーコート)と、その下にぎっしり詰まったやわらかい毛(アンダーコート)。ちゃんと見ると、本当に二層になっているのが分かります。
これが、1回のグルーミングで取れた毛です
そして、これがその日のグルーミングで取れた毛です。

B5のノートより、大きい塊になりました。
切った毛ではありません。すべて、抜けた毛です。
私が「写真を撮らせて」と言ったら、妻が笑って言いました。
「飼い主さんも、写真撮っていったよ」
説明されるより、これを見るほうが早い。 ——たぶん、そういうことなんだと思います。
この抜け毛、病気じゃない?
最後に、心配なときの目安を。妻の答えは明快でした。
「局所的に抜けるのが病気。ハゲる、地肌が見える。そういうときは動物病院へ」
- 全身から均等に、季節に合わせて抜ける → 正常な換毛
- 一部分だけごっそり抜ける・地肌が見えている・左右対称に薄くなる → 病院へ
かゆがる、赤い、フケが増えた、といったサインがあるときも同じです。迷ったら、まず動物病院に相談してください。
「抜けてよかった」——妻の答えに、はっとした
はるたは、換毛期になると本当にごっそり抜けました。ブラシをかけると、ふわふわの毛が次から次へと出てくる。掃除機とコロコロが手放せない季節です。

換毛期はね、ブラッシングしてもらうとスースーして気持ちいいんわん。それにブラッシングの間はママを一人占めにできるんだわん。
そんな日々を思い出しながら、私は妻にこう聞きました。「はるの換毛期で、一番大変だったことって何?」
大変だった思い出話が聞けるだろうと思っていたんです。でも、返ってきたのは予想もしない答えでした。
「全然、大変だと思わない。換毛期のたびに、”抜けてよかった”って思う。安心するの。——抜けることが正常で、健康な証拠だから」
……はっとしました。
私はずっと、抜け毛を「困りごと」だと思っていました。掃除が増える、服につく、なんとかしたい、と。でも妻にとっては、季節ごとにちゃんと毛が生え替わることは、その子が健康に季節を越えている証だったんです。
だから、掃除に裏ワザはいらない。戦う相手じゃないから。
床に落ちた毛を見て「今年もちゃんと抜けたね」と思えたら、コロコロを転がす時間も、少しだけ違って見えてくる気がします。



コメント