「ブラッシングって、ブラシならなんでもいいんでしょ?」——実はわたしも最初はそう思っていました。でも、トリマーの妻に聞いたら返ってきたのは意外な答え。「道具は犬種で決まる。そして1本じゃ足りない」。
この記事では、動物看護師でトリマーの妻に教わった、犬種別の道具の選び方と、おうちブラッシングの基本をまとめます。プロの現場の本音がたっぷりなので、「ネットでよく見る話と違う!」という発見もあると思います。

ブラッシングは「毛を整える」より「体を知る」時間
ブラッシングの目的は、見た目をきれいにすることだけではありません。
- 毛玉やもつれを防ぐ(毛玉はその子にとって痛くて不快なもの)
- 抜け毛を取り除いて皮膚を健康に保つ
- そして一番大事なのが、毎日体に触れて「あれ、いつもと違う」に気づけること
しこり、赤み、フケ、触ると嫌がる場所——こうした変化に最初に気づけるのは、毎日一緒に暮らしている家族だけです。ブラッシングは、うちの子の健康を守る「毎日の健康チェック」でもあります。

ブラッシングの時間は、体のすみずみまで見てもらえる安心の時間なんだわん。
最初にそろえるのは「2本」——道具は犬種で決まる
妻に「初心者が最初に買うべき1本は?」と聞いたら、「1本だと足りない」と返ってきました(笑)
正解は、その子の犬種に合わせたメインブラシ1本+コーム1本の「2本」。順番に説明しますね。
メインブラシ①スリッカーブラシが合う犬種
細い針金状のピンが並んだブラシ。古い毛を取り除いたり、毛のもつれをほぐしたりするのが仕事です。
合う犬種:プードル、ビション・フリーゼ、シュナウザーなど(巻き毛・トリミング犬種)
わが家で使っているのはプラッシュパピーの青いスリッカー。正直、お値段は張ります。でも妻いわく——
『安いのは毛に引っかかるからダメ。ちゃんといいものを買ってほしい』
毛に引っかかる=その子が痛い=ブラッシング嫌いになる、ということ。道具の値段は、うちの子の「痛くない」のためなんです。
※人気商品のため、品切れになっていることがあります。妻いわく「待ってでも良いものを」とのことなので、再入荷を気長に待つ価値ありです。
メインブラシ②ピンブラシが合う犬種
ピン先が丸く、長い毛の根元までしっかり届くブラシです。
合う犬種:シェルティー、スピッツ、コリー、ボーダーコリー、ポメラニアンなど——毛に長さがあって、スリッカーだと根元まで届きにくい犬種。抜け毛が多くてももつれにくい犬種(チワワ、ミニチュア・ダックスフンドなど)にも向いていて、ダブルコートの子に使う頻度が高いブラシです。
ここで面白い話をひとつ。妻に「スリッカーはプードル系専用なの?」と聞いたら——
『スリッカーは何の犬種に使ってもいいよ。ちゃんと根元までブラシが入るなら。でもそれが難しいかも』
実際、妻はシェルティーのはるにスリッカーも使っていました。でも普通の人には勧めないそうです。プロは技術で根元まで入れられる。私のような初心者は、それを道具でカバーする——だから「犬種で道具を選ぶ」が、家庭ブラッシングの現実解なんですね。
コームは全員必須——「仕上げと確認」の道具
コーム(櫛)は、メインブラシの後に通して、毛の流れを整えながら「もつれが残っていないか」を確認する道具。どの犬種でも必須です。
妻が実際に使っているのは、ハチコウのグレイハウンドタイプのコーム。ダブルコートの子にはこれを使っています。
ちなみにシングルコートの子向けには、妻はケイプロMeisterのロングピンタイプを愛用しています。これは正真正銘プロの愛用品……なのでお値段もプロ級です(笑)一般の家庭なら、コームは3~4,000円くらいのもので大丈夫、どちらか1本ならグレイハウンドタイプで兼用OK、とのこと。正直にお伝えしておきます。
↓こっちが一般用
↓こっちが参考までに妻の愛用品
ミニ知識:目の周りの「かぴかぴ」
プードルやビションなど、目頭の毛が目やにで固まりやすい子は、お湯で湿らせたコットンでふやかしてから、ノミとりコーム(これは安いものでOK)でそっと取ります。目やにケアの詳しいやり方はこちらの記事でどうぞ。

ラバーブラシは?
ゴム製のマッサージみたいなブラシ、お店でよく見ますよね。妻の答えは「基本使わない。使うとしたら柴犬や秋田犬くらいかな。あ、猫には使うよ(笑)」でした。買うのはメインブラシとコームが先で大丈夫です。

ラバーブラシはぼくの道具だにゃ。はるとく~に貸してただけだにゃ。
基本のやり方——コツは「根元を見ながら」
- 毛をかき分けて、根元を見ながらブラッシングする
- ブラッシングは毛の流れに沿って
- 終わったら根元からコームを通して、引っかかりがないか確認
一番のポイントは「見ながら」です。毛の表面だけをなでるブラッシングは、気持ちよさそうに見えて、実は根元に古い毛やもつれが残ったまま。見えないままやらない——これがプロのコツでした。
ちなみにネットでは「スリッカーで皮膚をこすりすぎる『スリッカーバーン』に注意!」とよく書かれています。妻に現場の実感を聞いたら、意外な答えが返ってきました。
『基本あんまり見ないよ。みんな家では怖いのもあって奥まで届かないから。そうはなりにくい』
つまり、家庭のブラッシングの本当の問題は「強すぎること」より、「根元まで届いていない(効いていない)こと」の方が多いんです。だからこそ、根元まで届く道具選びと「見ながら」が大事なんですね。
あと、細かい疑問もまとめて聞いておきました:
- 濡らす?乾いたまま? → 乾いたままでOK。わざわざ濡らす必要なし
- 毛の流れに逆らうのは? → 基本しない。逆らうのは、シャンプー後にドライヤーで乾かす時だけ
頻度の目安——わが家の実例
プードル(巻き毛・シングルコート)の場合
毛が抜けない代わりに、もつれやすく、もつれの行き着く先は毛玉。妻いわく、理想は1〜2日に1回のブラッシング、月1〜2回のシャンプー、月1回のトリミング。ちなみにトリミングモデル犬のく~は週1回シャンプー+その間に1回ブラッシングという、ややプロ仕様の生活です(笑)

ぼくのふわふわは毎週のシャンプーと日々のお手入れでできてるんだよ。えっへん。
シェルティー(ダブルコート)の場合
換毛期は「アンダーコートがごっそり生え替わる」と言われていて、身構えていたのですが、13年一緒に暮らした実感を妻に聞くと「抜けたよ。でもそんなにつらくなかった。換毛期で抜ける子は勝手に抜けるから、ブラッシングより部屋の掃除が大変」と、意外と等身大の答えでした。ブラッシングの頻度も「その子次第」でいいそうです。
ただしひとつだけ、大事な注意を教わりました。
換毛期に、ブラッシングしないまま抜け毛だらけでシャンプーすると、毛玉になります。シャンプー前にはブラッシングを。シャンプーの詳しい手順はこちらの記事でどうぞ。

嫌がる子は「たわし」から始める
ブラッシング嫌いな子はどこから始めればいい?——妻の答えは、予想の斜め上でした。
『どこから、の前に。最初は普通のたわしで軽く撫でるだけ。本当に普通のたわしね。あとはコームの反対側(歯のない側)で撫でるだけ』
たわしやコームの背なら、絶対に毛に引っかからない。つまり「ブラシっぽいものに触られる=気持ちいい」だけを先に覚えてもらうんです。場所は背中から始めて、少しずつ色々なところへ。
ここは妻がかなりの熱量で話していた部分なので、そのまま伝えます——最初にブラシを使ってうまくいかなくて、引っ張ったり引っかかったりすると、ブラッシングそのものが嫌いになってしまう。だから「嫌いにさせない」ことが何より大事。人の都合ではなく、犬の様子を見て少しずつ。爪切りや耳掃除とまったく同じ、「怖くない形で続ける」が近道です。
毛玉ができてしまったら
小さなもつれなら、毛玉の根元を指で持って(皮膚が引っ張られて痛くないように)、スリッカーで毛先から少しずつほどきます。滑りをよくするスプレーを使うのもあり。妻のおすすめはプロも使うこちらです。
ただし、妻の本音はもっとシンプルでした。
『毛玉ができたらサロン。これ絶対。そもそも毛玉を作らないであげてほしい』
毛玉ができてしまう状態なら、毛玉ができる前に月1回はトリミングに出すこと。家で無理にほどいて痛い思いをさせるくらいなら、プロに任せる方がその子のためです。
ちょっとでも「変だな」と思ったら、サロンより先に病院へ
皮膚の赤み、フケ、脱毛——ブラッシング中にこうした変化に気づいたら?看護師でもありトリマーでもある妻の答えは明快でした。
『ちょっとでも変だと思ったら、サロンじゃなくて、とにかく先に病院へ』
毛の問題はサロンで解決できても、皮膚の問題は医療の領域。日頃からよく見ていれば、飼い主さんが一番の観察者になれます。ブラッシングがそのまま、うちの子の健康を守る目になるんです。
最初の1年は、プロと一緒に
最後に、これから犬を迎える方・迎えたばかりの方へ、妻からのアドバイスを。
『犬を飼うのが初めてなら、最初の1年はトリミングに出してほしい。上手な人にやってもらって、それを見ながら、自分も少しずつ覚えていくのがいちばんだよ』
初めての飼い主さんと初めての犬——「初めて同士」のスタートだと、どうしても引っかかったり、force加減がわからなかったりで、「うまくいかない」が重なりがちです。それはその子に「お手入れ=痛い・怖いもの」と覚えさせてしまうことにもつながります。誰も悪くないのに、です。
「自分で全部やってあげなきゃ」と思わなくて大丈夫。プロの手を借りるのは手抜きじゃなくて、その子に「お手入れは怖くない」と覚えてもらうための、いちばん確実な道です。プロのやり方を見て、聞いて、家では「たわしで撫でる」から。焦らず、その子のペースで、ブラッシングを「ふれあいの時間」に育てていきましょう。
お手入れ全体の基本は、こちらの記事にまとめています。

今回登場した道具まとめ
記事で紹介した道具を一覧にしておきます。必要なのは「メインブラシ1本+コーム1本」の2本だけ。あなたの子の犬種に合うものを選んでくださいね。
メインブラシ(どちらか1本)
▼ プードル・ビション・シュナウザーなどの巻き毛の子に
【プラッシュパピー スリッカー】
▼ シェルティー・ポメラニアン・チワワ・ダックスなど毛に長さのある子に
【プラッシュパピー ピンブラシ】
コーム(全員必須・1本でOK)
▼ 迷ったらこれ。ダブルコートにも兼用できるグレイハウンドタイプ
【ハチコウ グレイハウンドタイプコーム】
▼ シングルコートの子向け・一般用
▼ シングルコートの子向け・妻の愛用品(プロ仕様なのでお値段もプロ級です)
【ケイプロ Meister KS-230LP】
あると便利(なくてもOK)
▼ 毛玉・もつれ対策のスプレー。プロも使っています
【アルテロ ミックススプレー】


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